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初めて人事関連部門で社員教育の担当になった方に贈る3冊の本

春になり人事異動も多い時期になってきました。

人事部や総務部に異動になり、初めて社員の教育に携わることになった方のために、まず最初に読んでおくと良い本をご紹介します。

社員教育、人材開発、能力開発など色々な言葉が使われますが、そのような分野で良い仕事をしていくためには、どのような知識やスキルが必要なのでしょうか?

アメリカには、ASTDという世界規模で人材開発を支援する団体があります。
100カ国に約8万人の会員がいる、人材育成施策や教育研修などに関する研究や情報提供を行っている、かなり大きな団体です。

ASTDでは、人材育成のプロフェッショナルに求められる能力を、9つの分野で定めています。
そして、その能力を認定するCPLPという資格制度も推進しています。

CPLPの9つの認定項目は以下の通りです。

1.ラーニングのデザイン
2.ヒューマンパフォマンスの改善・向上
3.研修の供給・実施
4.評価・測定
5.組織変革のファシリテーション
6.学習機能・環境の管理
7.コーチング
8.組織ナレッジの管理(ナレッジマネジメント)
9.キャリアプランニング・タレントマネジメント


かなり幅広い領域の知識やスキルが網羅されていますが、これが人材育成のプロフェッショナルとしての能力要件のグローバルスタンダードと言えるでしょう。それぞれの項目については、以下のリンク先に掲載されている、ASTDインターナショナルジャパン会長の中原孝子さんのインタビュー記事を参照してください

ヒューマンキャピタルOnline「日本の人材育成は逆ガラパゴス」

http://www.nikkeibp.co.jp/article/hco/20111102/289366/?P=2

ASTDが定めている知識体系は、確かに企業において人材育成を効果的に進めるためには、どれも欠かせないものだと思います。
人材育成を担当する方の、個人的な経験則や想いも大切ですが、それだけでなく普遍的な理論を理解しておくことも必要です。

しかし、はじめて人材育成の世界に入った人が、先に挙げたASTDが定める幅広い分野の能力を、いきなり身につけることは難しいでしょう。まだ日本では体系的に学べる場もほとんどない状況です。

まずは、以下の3冊を読んでおけば、9つの分野に関連する最低限の重要な知識を理解する事ができると思います。

◆人材開発マネジメントブック―学習が企業を強くする

福澤 英弘 (著)



まず、最初に読む本として適していると思います。
「理論編」と「実践編」の大きく2部構成になっています。

「理論編」では、人材育成に関する心理学・経営学などの理論の基本を解説しています。
そもそも、「能力とは何なのか?」「学習とは何なのか?」。
普段、何気なく使っている言葉も、いざ定義や意味を問われると、うまく答えられない場合もあるのではないでしょうか?
本書では、ごく基本的な言葉についても、理論的な背景を知る事が出来ます。

「実践編」では、研修を企画したり運営する等の、実務に必要なノウハウを理解する事が出来ます。
著者の福澤英弘さんは、実際に企業研修部門の責任者を務めてきた方なので、キレイ事ではない泥臭い実践的な記述になっています。
実務のヒントになる部分も多いでしょう。

◆教材設計マニュアル―独学を支援するために

鈴木 克明 (著)



先に書いたように人材育成の仕事をするにはかなり幅広い分野の知識が必要ですが、その中でも特に重要なのがインストラクショナルデザインという考え方です。

本書では、「釣り入門」という独学で学ぶための教材をつくるプロセスを事例にしながら、インストラクショナルデザインの基本的な概念をとてもわかりやすく学ぶ事が出来ます。

インストラクショナルデザインの考え方は、人材育成における教材や集合研修、e-Learningなどの様々な手法の根本となるものです。

企業での人材育成をテーマとした本ではありませんが、仕事をする上で参考になる部分はかなり多いと思います。

例えば、外部の研修会社に依頼する場合も、その教材やプログラムの構成が適切であるかどうかを見極める必要がありますが、その際にも本書で学んだ知識が役に立つことでしょう。

◆はじめての教育効果測定―教育研修の質を高めるために

堤 宇一 (著), 久保田 享 (著), 青山 征彦 (著)



企業の業績が低迷してくると、多くの場合、人材育成にかかる「教育費」が真っ先に削減の対象になりやすいといわれます。

人材育成には、かなり大きな労力と時間と費用がかかります。最近では、特に、研修などを実施する時に、費用対効果の検証が求められる傾向が強くなってきています。

だからこそ、教育効果の測定は正しい手法で行う必要がありますが、本書ではそのための基本的な知識がわかりやすく解説されています。
具体的な事例を通して、測定シートやアンケートのサンプルも交えながら、教育効果測定のプロセスを学ぶことが出来ます。

以上、3冊の本をご紹介しましたが、それぞれの本の中にも参考文献として多くの良書が挙げられています。
次のステップとして、それらの本も読んで知識を深めていけば良いでしょう。

最後に、私自身に対する自戒の意味も込めて、東京大学准教授の中原淳先生の言葉を引用しておきます。

あなたは、大人に学べと言う。
あなたは、大人に成長せよと言う。
あなたは、大人に内省せよと言う。

それならば、そういう「あなた」はどうなのだ?

あなた自身は、学んでいるのか?
あなた自身は、成長しようとしているのか?
あなた自身は、内省しようとしているのか?

いつもと同じ風景が輝いて見えた今日、3月11日

東日本大震災から1年が経ちました。
被害にあわれた方には心よりお悔やみ申し上げます。


私は、今日、いつもとあまり変わらない平凡な日曜日を過ごす事が出来ました。

でも、1年前の3月11日は、多くの人がいつもと変わらない穏やかな日常を、震災によって断ち切られてしまいました。
そして、未だに震災前の「日常」に戻る事が出来ずにいます。


この1年間を振り返ってみると、今の自分を取り巻く「日常」も、いつ崩れさってもおかしくない脆いものだと思えてきます。
明日、いや1分後に、大地震に限らず、「ありふれた日常」を奪う何かが起きる可能性はゼロではありません。


今日は、そんな想いに耽りながら、米ハーバード大学ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が、大震災後に日本のビジネスリーダーに向けて贈ってくれた手紙を読み返していました。
クリステンセン教授は、以前このブログで著書を紹介しましたが、イノベーションの研究の第一人者です。


その手紙は、「日経ビジネスオンライン」に掲載されています。
クリステンセン教授は、自分の身を襲った心臓発作、ガン、脳卒中の三つの病からの「復興」の体験と、大震災に襲われた私たちを重ね合わせて手紙を贈ってくれました。
とても温かく胸を打つメッセージなので、ぜひ、読んでみて下さい。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110601/220356/?P=1


クリステンセン教授のメッセージから、私が特に共感したのは以下の二つです。


・自分の人生で最も最優先すべきだと信じていることを後回しにしてはいけない
・人のために尽くすことを迷わない


手紙の一部を引用します。


私たちは、人生において他人に尽くすことを後回しにすることができると考えがちですが、それは多くの人が犯す間違いです。
そんなにうまくいかないのです。私が学生の時の同級生がそうでした。大学教授として教えている教え子たちもそうです。

彼らはこんなふうに考えます。しばらくの間は自分自身の成功を目指してひたすら頑張ろう。「十分な財を成した」後に人生のギアチェンジをして、地元や家族に恩返しをするモードに入ろう──と。しかし、そういうことは(やろうとしたとしても)ほとんどの場合うまくいきません。

もっとお金を稼ぎたい、もっと事業を拡大したい、もっと製品を売りたい──。そうした欲求には終わりがありません。

あなたの人生において最も最優先すべきだと信じていることがあるのに後回しにすることを1度でもやってしまうと、物事の優先順位を正しく戻すことはとても難しくなってしまいます。
「これが最後」とずるずると同じことを繰り返してしまうのが人間の性(さが)なのです。


一見平凡に見える日常も、次の瞬間には、人を超越した自然の大きな力がかき消してしまうかもしれない。
もっと小さな運命の悪戯でさえも、平穏な日常を奪ってしまうかもしれない。
隣にいるのが当たり前と思っている大切な人とも、別れなければならなくなるかもしれない。

私は、大震災が、そのような事を改めて教えてくれたと感じました。

だからこそ、「大切な事を後回しにしてはいけない」と思えてきます。


そして、クリステンセン教授は、こんなメッセージを投げかけています。


いくつか助言させてください。毎日1つ、自分自身に対して約束をしてください。
人のために尽くすことに迷わないことを。
家族や友人、ご近所、見知らぬ人に対してさえ、彼らが何を必要としているのかを理解しようと努力することを。


これは、何も特別なボランティアのようなことでなくても、日々の生活においてできることでも良いと思います。

職場であれば、お客様や社内の次工程の方の期待に応えたり、家庭であれば、家族やってくれることに対して改めて感謝を伝えたり、そんな当たり前の事をおざなりにせずに、日々大切に考え続ければ良いのではないでしょうか。


そんなことを考えていたら、平凡な日曜日の風景が何となく輝いて見えてきました。

サムスンに学ぶ鋼の人材育成コンセプト


「人を育成しないのは罪悪である」


世界中に約30万人の従業員を擁するサムスンには、このような言葉があるそうです。


確かに、企業において人材育成はとても大切なことだと思います。
しかし、それを疎かにすることを「罪悪」とまで言い切ってしまうのには、サムスンの人材育成に対する鬼気迫る程の強烈な想いを感じました。

冒頭の言葉は、「サムスンの戦略的マネジメント」(片山修著)という本の中に書かれています。


私も様々な企業事例を調べていますが、グローバルに事業を展開している優良企業の人材育成には、特に以下の2つの特長があると思っています。


  • 求める人材像が明確に定義され、シンプルな言葉で明文化されている
  • 強固な人材育成のコンセプトが一貫性をもって実践されている

これが、独自性のある人材育成の仕組み作りの源泉になり、他の企業と明確に差異化された強みを生み出し、厳しいグローバル競争に勝つことができるのでしょう。


冒頭の言葉が象徴的だと思いますが、サムスンの人材育成においても、この2つの特長が濃厚に見て取れます。


サムスンの人材育成への取り組みについては、「サムスンの戦略的マネジメント」の中で紹介されています。


例えば、サムスンでは、どのような新人研修を行っているのでしょうか?


同書から引用します。(P163より引用)


サムスンでは、入社後、25泊26日の合宿生活がある。対象は新入社員約8000人だ。
朝5時30分から夜9時まで、20人から30人が一つのチームとなり、与えられた課題に取り組む。課題の内容は、経営理念、歴史、社会人マナー、経営、経済などだ。重点が置かれているのは、創造力、チームワーク、克己、限界能力の養成である。
社会奉仕活動もある。
教育の70%〜80%が体験型、参加型で、先輩社員による後輩指導が伝統的に行われているという。

6月には「夏期修練大会」プログラムがある。
目的は、新入社員に共同体意識を植えつけることだ。約8000人の新入社員が、グループ関係会社のCEO、新任役員など500人とともに、1泊2日のプログラムをこなす。


新入社員8000人となっていますが、これはグループ全体での人数です。
関連会社の同期社員が全員で同じ研修を受けることで、自然と協力関係も深まるのでしょう。


一読すると、まさに軍隊風の厳しさを感じる内容です。
今時の日本企業ではこのような研修は行われていないでしょう。


しかし、よくよく考えてみると、韓国経済の命運を背負ったグローバル企業だからこそ、上記のプログラムが必然となるのだと納得できます。


サムスンには、「サムスン憲法」があります。
その内容は以下の4つです。


  • 人間味(心温かい人間性)
  • 道徳性(道徳、公徳心)
  • 礼儀凡節(東洋の伝統規範を守る)
  • エチケット(世界で通用するマナーを守る)

また、経営理念には、以下の3つが掲げられています。


  • 事業報国
  • 人材第一
  • 合理追求

これが、サムスングループの全社員に浸透しています。


新入社員に、このような人間性の根幹に関わるような共通意識を徹底するには、頭で理解するだけではなく、長期に渡り寝食を共にし体験を共有することが必要でしょう。


また、サムスンでは求められる人材像を以下のように定義しています。
(同書P156より引用)


・創造人

柔軟な思考と創造力をもとに、自分なりの個性と"気"を伸ばしていく人


・世界人

国際的な素養と外国語の能力をもとにして、互いに異なる人種や文化を積極的に受け入れられる人

・学習人

絶えず変化する"一生学習”の時代において、新しい知識と情報を絶えず習得していき、一つの分野の専門家として成長していく人

・社会人

人間味と道徳性を基盤に、ともに生きる健全な社会構成員として、自身の役割と責任を果たす人


このような人材になることが求められていることを、新入社員が深く理解するためには、朝5時半から夜9時まで課題に取り組む厳しさを乗り越える試練が必要でしょう。


また、特に「世界人」としての意識を持たせるには、世界のグループ社員が一堂に会して研修を受けることが有効となるでしょう。


例に挙げた新入社員研修だけを見ても、世界中の約30万人が、同じ価値観や思考様式を共有しスピーディに協調して動けるようになることを、明確な目的とした一貫性が感じられます。


そして、その一貫性とは、サムスンが、自社の経営理念や求める人材像、サムスン憲法などの人材育成に関するコンセプトを、どう具現化するか考え抜いた結果の現れなのでしょう。


最近では研修の費用対効果なども話題になります。
サムスンでは、前述のとおり、新入社員約8000人を25泊26日かけて教育しています。
これには、かなりのコストや労力がかかるはずです。
しかし、それはグローバルな競争に勝つために必要な投資と考えているのでしょう。


新入社員研修だけに限らず、人材育成プログラムを考えるときには、自分たちの会社が本当に大切にしているものを問い直すことが必要なのでしょう。
本当に大切なものが見えれば、目的も明確になり、手法やコストも自社にとって適切なものになってくるでしょう。


そして、他社と明確に差異化された、独自性と一貫性がある人材育成の仕組みができあがっていくはずです。


サムスンの、鋼のように強固な人材育成コンセプトの徹底ぶりを見て、改めてそう感じさせられました。


その他にも、同書には、日本企業を脅かす勢いを持つサムスンの、マネジメントの実情が書かれています。
興味のある方は、読んでみると有益なヒントが多く得られると思います。

イノベーションを起こす人材を育成するには?


今、世界中の企業が、新たなイノベーションを求めています。


では、新たなイノベーションを生み出せるのは、どのような人材なのでしょうか?
イノベータのスキル要件を明確にすれば、育成も効果的にできるでしょう。


イノベーション研究の第一人者である、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンらが、イノベータに特徴となる5つのスキル(発見力)を明らかにしました。


その研究成果は、最新の著書「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル」にまとめられています。


まず、イノベータのDNAとも言える5つの特徴的なスキル(発見力)とは、以下の通りです。


1.関連づける力

2.質問力

3.観察力

4.ネットワーク力

5.実験力


クリステンセン教授らは、約8年間にわたる研究からこの5つのスキルを抽出しました。
その研究は、75カ国以上の500名を超えるイノベータと5000人を超える経営幹部のデータを分析したり、100名近くの革新的な起業家やCEOに対するインタビューを行うという、かなり大規模なものです。

インタビューの対象も、アマゾン・ドットコムジェフ・ベソスP&GA・G・ラフリーなどの著名人が多く含まれています。


今までも、イノベータの特性については色々なものが言われてきました。
それは、表現に多少の違いはあれ、「5つのスキル」とほぼ重なるものも多かったと思います。
見方によっては、それほど目新しいものではないかもしれません。


しかし、その根拠となる研究データについては、過去に類をみない実証的なものです。単に、スティーブ・ジョブスのような、特定の個人だけを分析したものではないのです。


だからこそ、クリステンセン教授らが提示した「5つのスキル」は、イノベータを育成するためのフレームワークとして、有効に活用できるものだと思います。


本書の中でも特に強調されているのは、「5つのスキル」は後天的に育成できるという主張です。


本書にはこう書かれています。


「イノベーションに必要な能力のほぼ3分の2が、学習を通じて習得できる。まず、能力について理解し、練習を積めば、やがて自分の創造力に自信を持てるようになる」


遺伝に関する先行研究でも、創造性は、知性(IQ)よりも遺伝で説明できる割合が少ないという結果がでているのです。


では、「5つのスキル」とはどのような力なのでしょうか?


1.関連づける力


これは、一言で言えば、「意外な組み合わせ」を作る力です。
かけ離れた異質なアイディアや商品やサービス、技術などを結びつけることによって、全く新しいものを生み出すのです。


組み合わせの素となるものは、特に目新しくない既存のものであったり、他の人の頭の中のアイディアであったりします。
しかし、その「組み合わせ方」が斬新であれば、イノベーションを起こすことができるのです。


そして、その「関連づける力」を誘発するのが、その他の4つのスキルです。


2.質問力


質問というのは、特に特別なものではないように思われているかもしれませんが、イノベーションのきっかけとなるとても重要なものです。


クリステンセン教授らはこのように書いています。


「イノベータは『いまどうなのか』(現状)と『これからどうなるのか』(可能性)について理解を深めるために、たくさんの質問をする。無難な質問は捨て置いて、型破りな質問をする。質問によって現状に異を唱え、おそるべき激しさと執拗さで時の主流派を脅かすことも多い」


インドのタタグループ会長ラタン・タタはこのように言っています。


「疑う余地のないことを疑え」


つまり、「質問力」とは、既存の枠組みや常識を越えて、新たな可能性を探求する力だと言えるでしょう。


3.観察力


以前から、イノベーションの手法の一つとしてエスノグラフィーが注目されていましたが、やはり、あたかも人類学者のように顧客を「観察」する力は、イノベータの重要なスキルなのです。


クリステンセン教授らによると、次のような枠組みで観察を行うと新たな発見の可能性を高めることができます。


  • 顧客がどんな用事を片づけるためにどんな製品を使っているかを積極的に観察する
  • 意外なことや普通でないことに注目する
  • 新しい環境の中で観察する機会を見つける

4.ネットワーク力


これは、多様な人たちと幅広くつながることで、新たなアイディアを創造することです。


人とのつながりと言っても、「ネットワーク力」は俗に言う「人脈」とは少し異なる意味合いがあります。


一般的に「人脈づくり」というと、自分や商品を売り込んだり、仕事を有利に進めたり出世に利用したりということを、目的にする場合があります。


しかし、イノベータはそのような目的の「人脈づくり」はあまりしません。

あくまでも新しいアイディアや洞察を引き出すために、色々な考えや視点を持った自分と異質な人たちとのネットワークを作り上げるのです。


5.実験力


これは、有名なエジソンの言葉に象徴される力と言えるでしょう。


「失敗などしていない。うまくいかないやり方を一万通り見つけただけだ」


イノベータは、実験を重ねながら、自分のアイディアが実際にどの程度成功するかを予測するための手がかりを手に入れ、革新的なビジネスモデルを粘り強く練り上げていくのです。

しかし、実験と言っても、イノベーションにつなげるには、科学者が実験室で行うようなものよりも、幅広くとらえる必要があります。


クリステンセン教授らは、イノベータは次の3種類の実験のうち、少なくとも一つを繰り返し行っていると指摘しています。


  • さまざまな試みを通して新しい経験をすること
  • ものを分解すること
  • 実証実験や試作品を通してアイディアを検証すること

例えば、一番目については、異文化の中で暮らしたり働いたりすることも含まれます。


実は、この幅広い実験力こそが、イノベータと非イノベータを最も区別するスキルなのです。


以上が、「5つのスキル」の概要ですが、本書では、それぞれのスキルを伸ばすためのヒントも提示されています。

例えば、このような面白いヒントもあります。


「睡眠によって、つながりのないものをつなげて、すばらしいアイデアを生み出せる確率が平均33%も高まるという」


また、「5つのスキル」を組織やチームに適用する方法も提示されています。


興味のある方は、本書を読んでいただければ、多くの有益なヒントを得られると思います。


イノベーションと言っても、いきなり大上段に構えてしまうと難しいと思います。
クリステンセン教授らも、こう言っています。


「とはいえ、われわれ一般人は多くの些細な(派生的)イノベーションを通して、世の中を変えていくのだろう」


まずは、身近な問題に「5つのスキル」を試して、確実な一歩を踏み出すことが大切なのでしょう。

初めてリーダーになった方に贈る5冊の本

ビジネスパーソンの人生の中で、最も大きな転機とはなんでしょうか?


それは、初めて、人を指導したり育てたりする立場、いわゆる「リーダー」になった時です。


マネージャー、チームリーダー、チーフ、主任、係長など、その立場の呼び方は組織によって様々ですが、単なるプレーヤーとの違いは共通するものです。


それは、「自分のことだけを考えるのをやめて、他人について考えはじめなければならない」ということです。


例え、自分がリーダーとして率いるメンバーが一人であったとしても、会社から人を預かるようなものですから、やはりしっかり育てる責任が伴います。

そのリーダーとしての役割を果たすためには、プレーヤーの時とは違う知識やスキルが必要になります。


でも、初めてリーダーとなった時に、それを丁寧に教えてもらえる機会は多いでしょうか?


ハーバード・ビジネス・スクールのリンダ・ヒル教授は、次のように言っています。


「マネジャーとしての行動の仕方を身につける事は、控えめに言っても気が遠くなるくらい難しい。それなのにほとんどの組織では、そのための支援がまったくと言っていいほど存在しない」


会社によって違いは大きいと思いますが、新しく正式な役職に昇格した時は、1日〜3日間程度の研修を受けるのが一般的でしょう。


しかし、正式な役職に就かなくても、リーダー的な役割を担うケースはとても多いものです。
そのような場合は、リーダーとして必要な知識やスキルを十分に学べないのがほとんどです。

特に若手社員でリーダーになった方は戸惑うことも多いようです。


そのような新米リーダーの状況は、決して日本の会社に限った事ではなく、先のリンダ・ヒル教授の言葉の通りアメリカでも同じなのです。


「自分のことだけを考えるのをやめて、他人について考えはじめなければならない」


そのような大きな転機を、不安を抱えながら手探りで乗り越えていくのは、かなり大変な試練でしょう。


そこで、初めてリーダーになった方にお勧めの本を五冊紹介しておきます。


リーダーに関する本は本当に沢山出ていますが、とりあえず「これだけ知っておけば何とかやっていける!」という内容のものを五冊に絞り込みました。

書店で平積みになるような流行ものではなく、多くの人に読み継がれている名著を選んでいます。


初めてリーダーになって不安を抱えている方は、ぜひ騙されたと思って読んでみて下さい。

そして、その中に書かれている事を職場で実践してみて下さい。

きっと、書いてある事を実践することの難しさを実感すると思います。

その時はまた、本を開いて、次にどうするか考えながら読んでみて下さい。

その繰り返しが、必ずリーダーとしての実力を高めていきます。


◆1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!
 K.ブランチャード 、S.ジョンソン (著)


管理している部下の顔を一人一人、一日の

ほんのわずかな時間でいいからチェックしよう。

そして、部下こそもっとも大切な財産であることを、肝に銘じよう。


こんな言葉から始まる、すぐれたマネジャーを目指す青年が、人を育てるための基本的な原則を学んでいく物語です。

1分間目標設定、1分間称賛法、1分間叱責法など、行動科学理論に基づいたシンプルで実践的な方法を学ぶ事が出来ます。


1分間リーダーシップ―能力とヤル気に即した4つの実践指導法
K.ブランチャード (著)


上に紹介した、「1分間マネジャー」と合わせて読むとより理解しやすいです。


どのように人を育成するかについて、次のように意見が分かれる事が良くあります。


「やっぱり、細かく口を出して指導した方が良い」

「いや、あまり細かく口出しせず、任せて自分で考えさせた方が良い」


どちらが良いかは育成するメンバーの意欲や習熟度に応じて変わるという「状況対応型リーダーシップ」理論を、物語形式でとても簡単に説明してくれる本です。


◆人を動かす 新装版
デール.カーネギー (著)


とても有名な古典的名著ですが、初めてリーダーになった時こそ改めて読み返すべきでしょう。

タイトル通り、リーダーは人を動かす存在であり、その仕事はレベルが上がれば上がる程、対人関係への対処の割合が多くなるからです。


時々目次を眺めるだけでも、改めて自分がまだまだ出来ていない事を気付かされたりします。


例えば、「人を変える9原則」。


・まずほめる
・遠まわしに注意を与える
・自分のあやまちを話す
・命令をしない
・顔をつぶさない
・わずかなことでもほめる
・期待をかける
・激励する
・喜んで協力させる


ちなみに、Google日本法人名誉会長の村上憲郎さんも、この本の目次を読むのを毎朝の習慣にしていたそうです。


◆プロカウンセラーの聞く技術
東山 紘久 (著)


リーダーとして最も大切なのは、「メンバーから相談されやすい雰囲気を作る」ことです。

そのためには、「聞く技術」を磨く必要があります。

しかし、人の話をしっかりと聞くというのは、簡単そうでなかなか難しいものです。

例えば、相手が話しやすくするには、どんなことを心がければ良いのでしょうか?

本書には、こう書かれています。


「どれほど深刻な話でも聞き手が余裕をもち、飾らず、オープンで、ユーモアのセンスに富んでいますと、話し手も心の自由度が広がり、心から話ができるようになるのです」


やさしい言葉でわかりやすく書かれていますが、カウンセリング理論に根ざした正しい知識を得る事ができる本です。


◆コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる
伊藤 守 (著)


コーチングはリーダーとして身につけるべき必須スキルの一つですが、実践を通してしか身に付かないものです。

多くの本が出ていますが、知識としては、この本一冊を読んでおけば十分です。

あとは、書いてある事を失敗を恐れず繰り返し実践していけば良いでしょう。


以上、私の独断と偏見かもしれませんが、初めてリーダーとしての役割を担う方にとっては、「ベスト5」だと思います。


私自身、ここで紹介した本に書いてある事を、本当に高いレベルで実践できるようになるのは簡単ではなく、一生の仕事なのだと思う時もあります。


リーダーの仕事は、「自分を育てる」ことを通して、人を育てることなのかも知れません。


そのために、本を読み実践して、また本を読みながら自らを振り返る。

そのプロセスを愚直に続けていく事が大切なのでしょう。

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